《星期四喝可可》木曜日ココアを②

《星期四喝可可》木曜日ココアを②

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木曜日にはココアを(2)

僕は英語なんて、てんでわからない。「手紙」というものを書いたのも、いつが最後だったか思い出せないくらいだ。

だから彼女が異国の地に向けて日々の出来事や気持ちを伝えたり、あちら側から受け取ったりしていることが、まるで架空の世界で起きているように感じる。トレーシングペーパーみたいに薄い便箋、トリコロールが縁取りされた封筒。このIT時代に長文を手書きしてるっていうこと自体がちょっと謎めいているのに、こんなレトロなアイテムを愛用しているココアさんは、ますます現実離れして見える。横を通ったときにちらりと目を走らせたら、彼女は万年筆で美しい筆記体を綴っていた。どんな魔法の呪文が書かれているんだろう。

便箋に文字を書きつけているときのココアさんを見るのが、僕はとても好きだ。唇がゆるやかに弧を描き、白い頰に赤みが差す。まばたきをするたび、伏せた目元で焦げ茶色の長いまつ毛が影絵を作る。

そんなときのココアさんは、決して僕を見ない。だから僕は、彼女をじっと見ていられる。手紙の相手のことをほんとうに大切に想っているんだなと、ほほえましさと軽い嫉妬が心の中で手を取り合う。

僕がここで働くようになったのは、2年前の初夏だ。

川沿いを歩きながら、葉桜になった並木の下で「この木はどこまで続いているのかな」とぼんやり思ったのが始まりだった。

そのとき僕は、無職だった。高校を卒業してから勤めていたチェーンのレストランが経営不振になり、リストラに遭ってしまったのだ。その日もハローワークの帰り道で、就職活動もうまくいかず、不安と時間だけはたっぷりとあった。ひまにまかせて木が途切れるまで進んで行ったら、生い茂る葉の陰に店があるのを見つけた。

こんなところにカフェが。僕は財布の中の小銭を確認してからドアを開けた。コーヒー一杯くらいなら飲めるはずだ。

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杳夭
杳夭
2024.3.05
好听!这本书看了中文很喜欢