日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き①

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日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き①


マーブル・カフェを出ようとしたら、鞄から本が飛び出ていることに気がついた。ファンシーな絵柄の表紙は、せっかくのバーキンにまったく不釣り合いだ。私は本を鞄の奥にしまい直し、息子の拓海を迎えに幼稚園へ向かった。


息子が通う幼稚園は通常午後2時がお迎え時間なのだが、4時まで預かってくれる延長保育というシステムがあるらしい。夫の輝也があらかじめ申請しておいてくれたおかげで、私は早退する前に午後一番の社内ミーティングをこなすことができた。思ったより早く終わったので、川沿いにあるお気に入りのカフェでお茶しながら明日の作戦を練るつもりだった。


マーブル・カフェは私のとっておきだ。桜並木の端にちょこんとあって、窓から四季折々の風景が楽しめる。インテリアがやさしげで落ち着くし、店員の男の子が若くてキュートで目の保養にもいい。今どき珍しいタイプの純朴青年。彼の作るホットサンドは、派手ではないけどていねいな仕上げで、どこかなつかしい味がする。料理ってその人が出るなあとつくづく思う。


でも今日は、あまりゆっくりくつろげなかった。未開のジャンルに足を踏み入れようと本を広げたところに、仕事の緊急メールが入ったからだ。ミスをした部下からのヘルプ依頼だった。急いで部下に指示を出し、クライアントに私から謝罪をしてフォローを入れる。


タブレットを使ってメールに集中していたら、テーブルに置いていた本をばさばさと床に落としてしまった。買ったばかりの新品だったのに角が折れて、大きなため息が出た。なんだか「失敗するよ」と誰かに言われたみたいで。


腕時計を見ると、お迎え時間の4時になろうとしていた。7月中旬の陽射しは、この時間になってもまだ暑い。太陽にまで追い立てられている気分になって、ストッキングのはりつく足を速める。仕事のファイルに加え、特集誌を2冊入れているせいでショルダーバッグがパンパンだった。


幼稚園は、橋を渡った向こう岸にある。今から拓海をピックアップして、ファミレスで早めの夕食を食べて、帰宅して、そのあとは……。ああ、拓海を風呂に入れたり寝かしつけたりしなくちゃいけないんだった。今日は練習することがあるのに。仕事よりもうんと荷が重い、結婚してから最大のミッション。


私は明日、初めて拓海の弁当を作らなくてはならない。