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日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き③
私が彼女たちに背中を向けると、「誰?」「たっくんとこの」「ああ」と話しているのが聞こえた。
「パパ来ないんだー。今日は私、パートで延長保育したけど、たっくんいるからパパに会えるのかと思ったのに」と、輪の中からあきらかにがっかりな声がして、私は思わず足を止める。
なんだ、人気者なのね、輝也パパは。振り返らずに私は、再び歩き出した。
園舎に入ると、拓海がマッシュルーム頭を揺らしながら「おかあさーん」と駆けてきた。両腕をぴっと横へ伸ばして、飛行機のマネをする。乗ったことのない飛行機は拓海の憧れだ。
拓海に続き、ハタチくらいの先生が寄ってきた。たしか副担任の、えり先生だ。むきたてのゆで卵みたいに肌がつるんとしていて、ピンクのエプロンがこの上なく似合っている。
「わあ、初めてじゃないですか、ママがお迎えなんて。たっくん、よかったねえ」
またそれか。私が迎えに来ることがそんなに驚きなのか、それともみんな、そんなに輝也に会いたいのか。被害妄想かもしれないけど、普段送り迎えしないことをみんなに責められているように思えた。
拓海はロッカーから通園バッグを取り出し、先生に向かって「おとうさん、キョートなの」と得意気に話した。先生が拓海と目線を合わせるように中腰になる。
「キョート? 旅行なのかな?」
「ううん、おしごと!」
「へえ、パパ、お仕事始めたの?」
私は先生に「仕事ってほどじゃないんですけどね」と答えながら、通園バッグを拓海の肩にかけた。
「たっくんちはトーキョーで、おとうさんはキョート。トーキョーとキョート」
拓海は覚えたての地名をうれしそうに唱えながら玄関へ走り出していく。5歳児の脳は、新しいものを取り入れるのが楽しくて仕方ないらしい。
園舎の窓から、まだ話し込んでいるお母さんたちの輪が見えた。私は先生に「あの、あそこのボーダーシャツの方、誰のお母さんでしたっけ」と小声で訊ねた。
「ああ、瑠る々るちゃんのママ。添そえ島じま瑠々ちゃん」
そえじま、そえじまるるちゃんね。私は頭の中で復唱し、言われてみれば入園式のとき隣の席に彼女がいたような、うっすらとした記憶がよみがえってきた。そのとき挨拶と簡単な自己紹介をしたかもしれない。
「じゃ、失礼します、えり先生」
頭を下げたら、先生のエプロンに「えな」と刺繡されたワッペンが縫い付けられているのに気づいた。しまった、「えり」じゃなくて「えな」だ。
しかし先生はまったく気にするふうでもなく、笑顔で「さようなら」と言って他のお母さんのところに行ってしまった。
はい、さようなら。逃げるように園舎を飛び出す。バカな親って思われたかな。暑さのせいだけじゃない変な汗が、額からにじみ出た。



