日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き④

日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き④

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日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き④

手をつないで歩道へ出ると、拓海が顔を上げた。

「ねえねえ、おかあさん。おとうさん、飛行機に乗ったかな」

「乗ってないよ。京都には新幹線で行くんだよ」

「新幹線は、飛ぶ?」

「飛ばない」

「カナブンは飛ぶよ」

「カナブンの話なんかしてないじゃん」

「キョートゆき、たっくん号、離陸しまーす! 出発しんこーう!」

めちゃくちゃだ。おもしろいけど。

私は思わず吹き出しながら、拓海のしめった手をぎゅっと握った。

蟬が鳴いている。そういえば少し前に、拓海がお父さんと拾ったと言って蟬の抜け殻を持って帰ってきたっけ。季節の移り変わるこの道を毎日毎日、輝也はこうやって拓海と歩いているんだなと思ったら、なんだか急に仲間はずれみたいな気持ちになって、胸がきしんだ。

夫の輝也は絵を描いて暮らしている。絵を「売って」ではない。「描いて」いるばかりだ、今のところは。知り合ったときは同じ広告代理店で働く、ふたつ年下の部下だった。

結婚するまぎわになって、彼は「僕、絵を描きたいんだよ」と言い出し、「もしできるなら、会社を辞めて家事を受け持ちたい」と懇願した。

そう言われて一応「ええーっ」と驚いては見せたが、私は内心ラッキーと思っていた。ずっと実家暮らしに甘んじていた私は、それまで茶碗を洗ったこともなく、炊飯器のスイッチさえ押したことがなかったのだ。

家事なんかより仕事のほうが百倍楽しい。「絵描き志望の夫を食わせる大黒柱の妻」でいられるなら、これで大義名分ができたというものだ。

かくして私はますます仕事に精を出し、輝也はかいがいしい主夫となった。料理が上手で、シーツにまでアイロンをかけ、ちりひとつなく部屋を整える。電車で1時間ほどのところに住む私の両親とぬかりなくうまくやることも忘れない。私が妊娠して産休を取っている間も、彼は私をそれはそれは大事に扱い、拓海が生まれてからは私がしっかり睡眠を取れるように時々別室で寝させてくれた。母乳の出が悪かったのもあって早々にミルクに切り替え、仕事への復帰を早めたので、私は拓海を育児しているという実感があまりない。立ったとか歩いたとか、記念すべき瞬間に立ち会うことも一度もなかった。幼稚園に入り、手作りが強要された手提げバッグも上履き入れも、輝也は厭わずに(むしろ嬉々として)まるで売り物のような完成度の高さでそれらを作り上げた。私は「こういうのが苦手なママたちを相手に商売したら」とそそのかしてみたのだが「そんなに上手じゃないよ」と一笑された。欲がない。輝也がその気なら私がプロデュースするのに。

ともかく、我が家は完璧なコンビネーションで成り立っていたのだ。京都から誘いがくるまでは。