日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き⑤

日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き⑤

5分钟 ·
播放数22
·
评论数0

关注初声日语微信公众号,和我们一起读日语原版书!

日语有声书连载《星期四喝可可》

まじめな卵焼き(5)

インスタグラムに載せた輝也の絵が「独特でユニークだ」と評価されて、フォロワーが増えたりコメントがきたりしているのは知っていたが、まさかグループ展のオファーがくるほどだとは思っていなかった。京都のモノ好きなギャラリーのオーナーが、まだ世に出ていない画家やイラストレーターを5人ほど集めて展覧会を開くからやってみないかと声をかけてくれたのだ。

たしかに、輝也の絵はおもしろい。一枚の風景からいろんなものが見えてくるトリックアートだ。でも、世の中にたくさんいるアーティストの卵たちの中で、輝也の作品が傑出しているかどうか、私にはわからない。私は最初、夢追い人を食い物にする詐欺師にだまされてるんじゃないかと疑い、ネットを駆使してギャラリーについて調べた。でも出てくるのはクリーンな話題ばかりで、今回の展覧会にしても交通費や宿泊費こそ出ないけど「出展料」を取られることもなく、このようなイベントはこれまで何度も行われていた。オーナーはその道でわりと知られた人らしく、いくつか顔写真つきのページにヒットした。でもどれも名前はなく、ギャラリーオーナーなのになぜか「マスター」とだけ紹介されている。地味でへろんとした顔のおじさんだけど、額の中心にあるほくろが印象的だった。有力な人脈があるのか、彼によって花開いた人も少なくないようだった。

その「マスター」からインスタ経由でダイレクトメッセージを受け取った輝也は、私に言った。

「グループ展自体は金曜から日曜だけど、搬入とか打ち合わせとかあるから、木曜日の朝に拓海を幼稚園に送ってその足で京都に行きたいんだ。だから、木曜日のお迎えと、金曜日の送迎と弁当をお願いできないかな。日曜日の最終で帰ってくるから」

私はすぐに「いいよ」とは返せなかった。「仕事あるし、無理」という非情な言葉が喉元までせりあがっていた。私が黙っていると、輝也はとりなすように言った。

「交通費とかホテル代とかなら、僕、自分で出すよ。朝あさ美みが働いて稼いでくれたお金は1円も使わないから、お願い」

絶句した。輝也はもしかしたらずっと「お金を稼いでいない自分は好きなことを我慢しなくてはならない、生活費を自分のことに使ってはいけない」などと思いながらつましく暮らしていたのだろうか。ひょっとしてこれまでも、絵を描くのに必要なものはすべて、結婚前から持っていた自分の貯金を崩して買っていたのだろうか。

私は思わず「そんなのいいよ、出してあげるから使いなさいよ」と言ってしまい、その直後にハッとした。「出してあげる」だって。不遜な自分に気づく。

しかし輝也は、そこには特に引っかからない様子で、さらりと言った。

「いや、ほんとに。お金のことはいいから。僕もそこそこ稼いでるから」

「え?」

稼いでる? 私が首を前に突き出すと、輝也はちょっとうつむきながら告げた。

「うん……言ってなかったけど、デイトレードがわりとうまくいってるんだ」

私は言葉を失った。そんなの、想像もしたことがなかった。ぽかんとしたまま輝也を見つめていると、彼はうかがうように言った。

「拓海のことお願いできる?」

うん、まあ……。仕方なく口ごもりながら承諾したが、私はそこからずっと、悶もん々もんとした不安に取り憑つかれている。

さておき、まずは目前のハードルをクリアしなければならない。

幼稚園の送迎は、その日だけ仕事をやりくりすればなんとかなるだろう。輝也がいない間の食事も、外食なりデパ地下の惣そう菜ざいなり、どうとでもできる。

問題は、金曜日の弁当だ。

赤、緑、黒、茶、そして黄。どうにも逃げられない卵焼き。