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日语有声书连载《星期四喝可可》きまじめな卵焼き
拓海と一緒にファミレスで夕食をすませて帰宅したあと、私はキッチンに立ち、フライパンを片手に特訓に入った。「卵焼きの作り方」は、本でもネットでもたくさん見て頭に入れたはずなのに、どうしてだかうまくいかない。ふっくらせずぺたんこだし、卵がフライパンにひっついてきれいに巻けない。おまけに、レシピによって卵に入れるのは塩だったり砂糖だったり醬油だったり、あるいは片栗粉や牛乳と書いてあったりもして、うちの卵焼きはどうなのかわからない。でもそんなことを輝也に電話して聞くのも憚かられた。
キッチン台の上に、崩れまくった卵焼きがどんどん並んでいく。リビングでテレビを見ていた拓海がやってきて「うわー!」と声をあげ、無邪気にこう言った。
「これ、なんていうお料理?」
その言葉に私はがっくりと脱力し、無言で新しい卵をボウルに割る。
テレビからアニメの主題歌が流れてきた。拓海は歌いながらあやしいダンスを始め、ぴょんと飛び跳ねると「ぶーん」と飛行機になってリビングに戻った。
菜箸で卵を混ぜる。シャカシャカ、シャカシャカ。どれくらい混ぜればいい? どれくらい焼けばうまくなる? 視界いっぱいの黄色がだんだんぼやけてきて、自分が泣いているのだと知って驚いた。
なんで、なんで。なんで卵焼きくらい満足に作れないのだろう。
子どものころから一生懸命勉強して、大学生になったら一生懸命就職活動して、会社に入ったら一生懸命仕事して、ずっと優秀だ優秀だと言われてきたのに。
仕方ない、私はずっと、逃げてきた。大嫌いな家事と自信のない育児を輝也に一切まかせて、仕事に逃げてきた。みんながなんでもなくできることができないコンプレックスから逃げてきた。
仕事ならどれだけでもやれる。クライアントの名前や顔は一度会ったら絶対に忘れないし、どんな大企業の重役と会っても緊張しないで堂々と意見を言える。みんなをあっと驚かせる企画を出すことも、大勢の人の前でプレゼンすることも、部下のミスのフォローも、私は誰よりもうまくこなせる自信がある。
だけど、私にはママ友ひとりいない。拓海の同級生のお母さんたちの輪がこわい。幼稚園の先生の名前すら間違える。りんごの皮を剝けば食べるところがなくなってしまうし、ゴミは全部燃えるとしか思えないし、洗濯ものを折り紙みたいに形よくたたむなんて難しい芸当、私にはできない。
唯一、家計を支えているという自負がこれまではあった。でもそれももう、私を安心させてはくれない。輝也がデイトレードでどれほどの利益を上げているのかは知らないけど、私が収入をなくしたとしてもきっと大丈夫なのだ。輝也にとって、拓海にとって、私がこの家にいる意味ってなんなんだろう。


